かつて100%を誇っていた日本の菜種自給率は、1971年の菜種貿易自由化以降、減少の一途をたどり、現在では0.1%以下にまで落ち込んでいます。

 現在、輸入される搾油用ナタネの約9割は、カナダ産のキャノーラ品種です。カナダでは、遺伝子組み換え技術を利用して開発されたキャノーラ品種が主力となっていますが、輸入されるナタネについて、遺伝子組み換えのものとそうでないものは区別されることなく扱われるため、輸入ナタネには遺伝子組み換えナタネとそうでないものが混じっていることになります。けれども菜種油には遺伝子組み換え食品の表示義務はありませんから、私たちは、それと知らずに口にしていることになります。

キャノーラ品種

アブラナの伝播

 アブラナ(油菜)は、アブラナ科アブラナ属の植物で、古くから野菜として、あるいは油をとるための植物として栽培されてきました。日本では「ナノハナ(菜の花)」「ナタネ」などと呼ばれ、明るい黄色が畑を覆う「菜の花畑」は春の風物詩として親しまれています。アブラナは、西アジアから北ヨーロッパに至る地域が原産地とされ、農耕文化とともに移動したと考えられています。日本には奈良時代までに伝わり、葉物野菜として利用されていたそうで、古事記には「菘菜(あおな)」、万葉集には「茎立(くくたち)」という名で登場します。

アブラナBrassica rapaと西洋アブラナBrassica napus

 和名の「アブラナ」は元々、「種子から油を採る菜(野菜)」の意味です。日本では葉物野菜として利用されていたアブラナですが、江戸時代に入ると、行燈用・食用として、多くの地域で搾油用アブラナが栽培されるようになりました。搾油用アブラナは、大きく2つに分けられます。ひとつは、日本を含め、東アジアで古くから栽培されてきたアブラナ(Brassica rapa, 在来菜種)と、19世紀以降にヨーロッパから導入された西洋アブラナ(Brassica napus, 洋種菜種)です。

国産ナタネ = 非遺伝子組み換え作物

 日本でも、エルシン酸を含まない品種の開発がすすめられてきました。この際、遺伝子組み換え技術を用いていないことから、「国産ナタネ」=「非遺伝子組み換え作物」という認識がなされています。

「アサカノナタネ」(1993)・「キザキノナタネ」(1994) は、国内で育種に成功した初めての「無エルシン酸品種」です。これらは東北地域での栽培に適した品種であったことから、温暖地での栽培に適した無エルシン酸種として開発されたのが「ななしきぶ」(2001年)です。

 さらに、2004年に品種登録がなされた「キラリボシ」は、日本初のキャノーラタイプの品種です。寒冷地南部での栽培に適した品種特性から、搾油後の油粕を肥料より付加価値の高い飼料に利用できる非遺伝子組み換えキャノーラ品種として、南東北地域で栽培が進められています。

 アブラナにはグルコシノレートと呼ばれる物質が含まれています。この物質は、抽出や粉砕などの強い刺激を与えると、分解され、ゴイトロジエンと呼ばれる成分に変化することがあります。この成分は甲状腺機能の低下を引き起こすことから、搾油時に生じる搾り粕(油粕)は家畜飼料ではなく、肥料として用いられます。

 一方、アブラナの種子(菜種)から搾った「菜種油」には、過剰摂取によって心臓に害を及ぼすエルシン酸という不飽和脂肪酸が多く含まれます。日本をはじめ東アジアでは、古くから菜種油を食用に用いてきましたが、油を多用する食生活が中心のアメリカでは、食用が禁止されていました。そこで、西洋アブラナの主要産国であるカナダの農業研究者によって、エルシン酸とグルコシノレートをほとんど含まない新品種として開発されたのが「キャノーラ品種」です。この「キャノーラ品種から搾油された菜種油」を「キャノーラ油」と呼びます。

遺伝子組み換え作物 GMO

奈良産業大学ビジネス学部

地域貢献プロジェクト

わが国のナタネ栽培・「国産ナタネ」の安全性について

ナタネのはなし